蛤志るこ

 当社では、契約農家の大分県宇佐市赤尾で栽培されたコシのある風味豊かなもち米「満月餅」を使い、しるこの最中種から製造しています。  最中作りは、もち米を粉砕してもち粉にし、くず最中(割れた最中を粉にしたもの)と合わせてお湯で練って蒸すところからはじまります。最中の製造には特殊な設備が必要となるため市販のものを使用することが多いのですが、自分の納得いく最中を作りたいという初代・一木武十郎の思いを引き継ぎ、当社では自家製の最中種にこだわっています。食べたときにもちもちとした食感と香りが残るよう、調節しながら種を作ります。
 種ができたら、蛤の形をした型に流し入れて最中を焼きます。三十年前までは、職工さんたちが一列に並べた型を順番にひっくり返しながら最中を手焼きしていましたが、現在では機械を導入しています。焼きたての最中は割れやすいため、木箱で保管してしばらく休ませます。  最中のなかに入れる小豆と抹茶(白いんげん豆)二種類の乾燥餡は、色や風味をしっかり残すために独自の装置で四、五時間かけて乾燥させます。この装置は初代が考案したもので、餡を焦がすことなく直火で水分をとばすことができるのが特徴です。直火でじっくり乾燥させることで、餡に独特の香ばしさが生まれます。  最後に、紅白の千鳥の餅を焼いて乾燥餡といっしょに最中に詰め、仕上げます。本物の蛤と同様、最中の形が対になっていますので、一つひとつ手作業で詰めていきます。この「蛤志るこ」は、お湯をかけると、中から二羽の千鳥が飛び立つように浮かびあがります。お召し上がりの前に、どうぞお楽しみください。